アパートへのお誘い

さて、学校の冬休み期間中はよくAmerican Honorsの友達からお誘いを受けるようになった。特に中国人や韓国人たちは普段あまり喋らずミステリアスな雰囲気を出している僕に、とても興味を持っているようだった。僕は特にやることもなかったので彼らの誘いに乗った。

ちなみに彼らについて少し話しておこう。まず、アメリカに留学をしている中国人や韓国人はかなり意識や向上心が高く、英語のレベルも高い。中国語と英語は文章の構成が非常に似ているため、単語さえ覚えてしまえば難なく話せてしまうのである。さらに、これは国民性から来ているのだろうが、彼らは発言力がある。恐れを知らずに授業中などもどんどん発言する。

僕の周りにいた中国人とか韓国人はやはり有名大学を狙っている人が多かった。ワシントン大学、ジョージワシントン大学、ボストン大学、UCバークレー、ウィスコンシン大学…などと名だたる大学ばかりである。なので僕らは編入の情報共有などをよくしていた。

とはいえ、僕はプライベートであまり彼らとつるむことは皆無に等しかった。それでも最終的に彼らの誘いを受けて、彼らがお互いでシェアしてるアパートに行くと、彼らは腕をふるって豪勢な食事を振る舞ってくれた。あまりにレベルが高くてびっくりしてしまった。中国人ってみんなこんなに料理できるのだろうか。

少し時間が経って、ジョッシュという韓国人が入ってきた。こいつはそこまで英語は上手くないが友達の前だとよく喋るやつだった。でも、テンション的にはこいつが1番合う。僕もジョッシュとは学校でたまに話していた。

中国人とか韓国人、どう思う?

アメリカで生活していると、よくアメリカ人に、「君は中国人や韓国人のことどう思ってる?」とよく聞かれた。みんな過去にあったイザコザ(現在も続いているが…)を知っていて気になっているようだった。

正直言うと、僕は中国人や韓国人は好きだ。やはり同じアジア圏というだけあって文化が近いし、とても話しやすい。それに、僕は今まで失礼な奴に会ったこともないし、逆に言えばみんな親切で礼儀もしっかりしている。スポケインにいたアジア系の奴らの名前は全員覚えているし、これからも忘れることはないだろう。彼らも同様に僕のことを好きでいてくれたし、僕が彼らのアパートにお邪魔するときは決まって豪華なご馳走を用意してくれた。

それに1番重要なのは、「中国人がどうだ」とか「韓国人がどうだ」とかいうしょうもない小さい規模の世界で僕らは生きていない。そんなことよりもっと重要なことがある。おそらく僕くらいの世代からであろうが、僕らはその先のことを見据えている。中国とか韓国とか日本じゃなくて、「世界」で考えているのだ。ちょっと文字にするのは難しいが、そういう風に考えていると国同士のイザコザなんてどうでもよく思えてくる。勝手にやっていればいい。僕らの世代が政治に関わるようになれば、世界はもっとシンプルになる。

だから、中国や韓国批判のニュースや新聞記事を見て、「やだねえ中国人は/韓国人は」って言って、国民性に疑問を投げかけている人を見ると、少しイライラする。彼らの大半は中国人や韓国人と話したことがない人達だ。政治的な違いで喧嘩することは仕方ないとしても、彼らの国民性に攻撃したり、観光にきている彼らを白い目で見るのは絶対に違うと思っている。君らは何も知らないんだ。彼らがどんな人達かを。

ジョッシュとよく歩いた帰り道

話を戻すと、彼らに美味しい料理をご馳走になった後、僕はジョッシュと2人でとぼとぼ歩きながら帰った。彼は感情豊かなやつで、1つの話に喜怒哀楽をふんだんに盛り込んでくるやつだった。

いろんな話をしすぎて何を話したかよく覚えていない。覚えているのは澄んだ冷たい空気と、街頭にオレンジに色に照らされた静かな雪道だ。バスで帰ることもできたけど、歩いて帰ることにした。彼の家族は韓国にいて、アメリカでは一人暮らし。お互い、孤独な留学生活を送っていることを分かっていたので、今日は思う存分たくさん話して帰ろう、と思ったのだ。

彼と話しながら夜の道を歩いたのは、もちろんこれが最後ではない。僕らはお互いが話し相手が必要なときは、ケータイに電話をかけて「歩かないか?」と一言言えばいいだけだった。僕らが編入でスポケインを離れるまで、毎週毎週、2人で同じ道を歩いたのだった。