American Honorsのオリエンテーションを終えて、翌日のコミカレのオリエンテーションがやってきた。これはインターナショナル生に向けたオリエンテーションで内容はよく覚えていないが、そこで色んな国からの学生に会うことができた。

しかし僕はこのオリエンテーションで愕然とする。

なんと日本人が結構いることが分かったのだ。

日本人がいないからと誰も聞いたことのないような街を選んだのにこんなに日本人がいるなんて。

まあでもいいか。別に話しかけなければいいんだから。

と思っていると、後ろから

「日本人ですか?」

という声が聞こえた。

いきなり出鼻をくじかれた。こっちから話しかけなくてもあっちが話しかけるという手があったか。話しかけられたからには応じないと。僕はそこまで嫌なやつじゃないので、一応ちゃんと会話はした。そいつの名前は雄三といって、スポケインにはもう2年間いるらしい。あれ?コミカレに2年間?と思ったが、別にTOEFLの点数がなくても、コミカレ付属のESL(語学学校)からスタートしてそこから1年間過ごせば自動的に授業を受けることができるらしい。彼はTOEFLも受けたことはなく、その語学学校からスタートしたようだ。

彼は僕にスポケインでの生活について色々アドバイスをしてくれた。悪い奴ではない。しかも僕と同じ1994年生まれだ。しかも聞いたところによると、なんとこの大学校舎のすぐ隣に、日本人女学生の寮があるらしく、スポケインには僕が予想しているより100倍日本人がいるらしい。スポケインの四年制大学の1つであるEastern Washington Universityには毎年日本から何十人も留学に来るというのだ。

よくアメリカには中国人がどこにでもいるというが、日本人も変わりないじゃないか。

それでも僕はこの先、彼とも、その他の日本人達に関わることはないだろう。僕はアメリカに来ているんだ。英語の向上のためにも文化の吸収のためにも、彼らとはつるまない方がいい。

そして去り際に彼はこう言った。

「よく日本人集めてパーティーするからお前もこいや」

ノーサンキューだ。日本人とパーティー?そんなものアメリカでやることか?と言いそうになったがそこは抑えた。ここで敵を作る意味はない。

今考えると、僕はこの頃視野が狭くて相当尖っていた。日本人のくせに同胞の日本人を敵視していたのだ。でも、大学を卒業した今だからこそ言えるが、周りに日本人は何人かいた方がいい。もちろん僕がプロローグに書いた通り、日本人と常に生活をしているようじゃ英語は伸びないし、人間としても成長しない。しかし、必要な時に助けを求めたり、話を聞いてくれるような日本人は周りにいるべきだ。

そんなことも知らずに日本人の友達撲滅キャンペーンを実施中だった僕は、このように日本人との接触を避けていた。

しかもそのオリエンテーションには見たことのある日本人もいた。

昨日のAmerican Honorsにいた背の高い日本人だ。

僕は彼の名前も素性も何も知らなかったが、勝手に敵視していた。なんだかクールぶってるように見えてイケすかなかったのだ。

その日も彼とは話さずにその場を後にした。