スポケインへ!

おっとこれを言うのを忘れていた。実は僕はスポケインでホームステイすることになっている。最初は色々勝手が分かりづらいだろうから、現地の人に手伝ってもらった方がいい、と思って下した決断である。

ホームステイ先の人は「マリア」、という人だった。メールは何通か交わしていたものの、そう言えば顔をみたことがない、と思って今になってシアトルのホテルで彼女をFacebookで検索してみた。

するとどうだろう。ぜんっぜんイメージしていた女性と違くてちょっとびっくりした。僕は優しそうな40代くらいの金髪の白人女性をイメージしていたのだが、実際は全て真逆で、超怖そうなメキシコ系の女の人だった。当たっているのは40代くらいということだけ。写真を見て少し萎縮してしまった。

まあ今更「変えて」といっても絶対無理なので(しかも顔だけで判断するとは超失礼だ)、現実を受け入れてその日はシアトルのホテルでぐっすり眠った。

さて、朝起きて、アメリカっぽい朝食(スクランブルエッグとトーストなど)をしっかりとってシアトルの空港に向かった。ここからスポケインまでは1時間ちょっと。いよいよ僕がこれから2年間過ごすことになる街に到着する。ドキドキワクワクだ。

ホームステイのマリア

飛行機がスポケインに到着し、ゲートを出ると、そこにはマリアがいた。怖い顔の女の人だからすぐに見つけることができたが、ニッコリ笑ってくれた。車で彼女の家に向かう最中、「飛行機はどうだった?」とか「シアトルはどうだった?」とか色々自分に話しかけてくれたので割とすぐに打ち解けた。

車から見える景色は、シアトルのそれとは全く違っていた。大きいビルも全くなくて、もっとゆったりした雰囲気になっていた。

スポケインのダウンタウン

マリアの家についた。とても大きくてびっくりした。なんだか、確かにアメリカの家、という感じ。それでもそうとう大きい家だった。この人、普段何してる人なんだろう?

リビングルームに入ると、そこからクソほどでかい庭が一望できた。いや、ちょっとまて。これはサッカーコートくらいあるぞ、と唖然とすると、

「これ全部私の庭ではないわよ」

と言って笑っていた。

どうやら小学校が隣接していて、90%はそこが所有しているらしい。それにしても柵かなんかで区切ればいいのに。

イメージ。これより1.5倍大きかった。

荷物を自分の部屋におろすと、マリアがリビングでお茶を出してくれた。そして、僕と対面で彼女も座った。彼女と他愛のない話をしていると、

「提案なんだけど…」

と少し雰囲気を変えてきた。

「実は月に一度、家の大掃除をプロの人に頼んでるの。その分のお金私とあなたで折半できないかしら?」

おっと。いきなりお金の話か。しかも、家の大掃除?そんなのみんなで協力してやった方がいいじゃないか。それに、なんで事前に言ってくれなかったんだろう?

ここが僕のマリアへの不信感の始まりだった。

ホームステイを考える人に1つアドバイスだ。

ホームステイ先の人はみんないい人で天使みたいな人、とは限らない。

もし、あなたにホームステイ先以外のオプションがあるのなら、例えば学校のHousingに相談してルームメイト付きのアパートなどを紹介してもらえるのなら、絶対にそっちの方がいい。まあ追々そのことがわかってくるだろう。

話を戻そう。僕はこの提案に少し疑問を抱いてしまったが、正直1日目で彼女を落胆させたくなかった。仕方ない、と「いいですよ」と言ってしまった(嫌ですって言えばよかった!)

しかも僕が将来映画をやりたい、というと、それなら「ゴンザガ大学がいいわ!」と言った。ゴン… なんだって?聞いたことない。

どうやらゴンザガ大学というのはスポケインで一番の大学のようだ。今で言うと、バスケの八村ルイ君もこの大学出身である。それにしても僕はゴンザガ大学なんて行く気はさらさらない。こんな小さな街の1番の大学なんて、全米で見たら米粒程度のものだろう。

「いや、僕はもっとすごい大学に行きたくて…」

「何言ってるの!ゴンザガは一流よ!」

と言う始末。世界が狭い人だな、と思ったがそこは深く掘り下げないことにした。その後も、銀行に行って口座を開設したり、ケータイを買ったりした。ちなみにここでも1つアドバイス。

銀行はローカルなものを使わずに大手と契約すること。

大手とは例えば、ChaseとかBank of Americaだ。ここで僕は馬鹿なことにスポケインのローカル銀行と契約してしまった。これじゃあ、他の州に行った時に色々面倒だ。ちなみにここはマリアがおすすめの銀行ということで連れてこられた場所だ(俺がスポケインにずっといると思ってるのか!?)

それでも何も知らない僕をこうやって色々連れて行ってくれたり助けたりしてくれるのはありがたい。僕は生活する上で必要なものを最初の1日目、2日目で全て揃えることができた。しかし、日に日にマリアへの不信感は募っていった。

マリアへの不信感

例えば、とにかく夕食がまずい。僕が特に嫌だったのがマメのスープだ。全く味がない。しかも食事が「マメのスープのみ」ということもあった。彼女はダイエット中で色々食事制限をしているそうで、それに僕が巻き込まれていた。俺はダイエットなんかしてないよ!

そして、家の2階には彼女専用のバスルームがあるのだが、そこがめちゃくちゃでかい。中東の国のお金持ちが入るようなクソでかい風呂に泡立てながら浸かっているのだ。しかも、彼女、何していると思う?学校の教師だ。学校の教師がこんな生活できるわけがない。後で知ったことなのだが、彼女は前夫とトラブルが起きて離婚したらしい。きっとそこで相当な金をぶんどったに違いない。

最初の数日で僕はなんとなく分かっていた。ここで2年過ごすのは相当な覚悟がいると。そして僕の予想は当たっていた。この先も僕は彼女に対してのイライラが募っていくのである。

先ほども言ったが、ホームステイ・ライフには気をつけること。おそらく、自由な生活がしたい人にとっては中々厳しいと思う。中には完全に好きなようにさせてくれるホームステイ先もあるが、そんな天使みたいな人はほんのちょっとしかいない。

学校に相談すれば、必ずルームメイトやアパートを見つける手助けをしてくれるから、そこに頼むことをお勧めする。

さて、ホームステイの話はとりあえずここまでにしておこう。授業が始まる前に僕には2つのオリエンテーションがある。1つはAmerican Honorsのオリエンテーションで、1つはコミカレのオリエンテーションである。最初はAmerican Honorsのだが、ここで、僕の留学生活に超重要な2人の人物と出会うのである。